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実習について

【施設実習で人生観が変わった…】
Sさんの実習インタビュー(東京都 児童養護施設)

S.Nさん

◆実習の時間はどうなっていましたか。

実習は1日8時間。時間配分はその日によって違い、例えば「6~10時/15~19時」「10~12時/15~21時」といった具合です。 夜遅く終わる日には、翌朝遅めスタートというような配慮もしてもらいました。 ただ終業後に、日誌を4時間半かけて記入するので体力的には大変でした。

◆実習前にどんな準備をしましたか。

保育専門学校では3回の実習がありますが、1回目は児童養護施設、2回目は保育所、3回目は自分で選択してまた児童養護施設に行きました。
それぞれで、専門学校からの課題と実習先施設からの課題がありました。
1回目の児童養護施設実習は、全員が対象だったこともあり、一般的な養護施設についての簡単なレポートでしたが、 3回目は、あえてなぜ児童養護施設に行きたいのか、自分のモチベーションがどこにあるのか、児童養護施設で何をしていきたいのか、 それを掘り下げることを求められました。
私自身は、自分の人生や育ち方、転機になった出来事を振り返って、社会人経験を経て、 早期退職をしてなぜシニアとして児童養護施設に入りたいと思うに至ったかをまとめましたが、 最終的にA4で40枚程度のボリュームの小論文を、指導教官の元、3ヶ月ほどかけて完成させました。

◆実習前に準備しておけばよかったということはありましたか。

コロナ禍だったので、事前の見学や、子供と触れ合う機会を持てなかったことは残念でした。 施設自体が遠方だったので、行くだけでも大変ということもありました。
コロナ禍でなければ、お試し実習に行きたかったですね。事前に一度訪れて、3~4時間子どもと触れ合うことができるようです。

◆実習中、苦労したことはありましたか。

思春期学齢のユニットに配属された時には、まず子どもたちとのコミュニケーションがとれないことに苦労しました。 とても難しい、荒れたユニットで、普通はそういうところに実習生を入れることは少ないようなのですが、 受け入れの体制がしっかりしているからこその受け入れだったようです。
そこでは、思春期の難しい年齢の子どもたちとのコミュニケーションに苦労しました。 最初5日間はほぼ言葉を交わすことはなく、引きこもりのような状態の子どもの中には、実習期間中一度も言葉を交わさない子もいました。
口をきいてくれないどころか、ひどい言葉をかけてくる子もいたほどですが、そんな状況でも、 子どもを差別せず、万遍なく言葉をかけることを指導されていたので、1日中掃除して様子をうかがえながら、めげずに声をかけ続けました。
そうすると段々、少しずつ言葉を返してくれる子どもが出てくるようになりました。

◆実習中にチャレンジしたことはありますか。

飲食業に携わっていたこともあり、食育をしたいという希望があったのですが、 ちょうど誕生日を迎える子どもがいて、誕生日ディナーの準備を買って出ました。
普段の食事に出ないような食材を使って、イタリアンを作ったのですが、普段、口をきいてくれない子どもが、 調理中の良い匂いにつられて言葉をかけてくれたり、何度もおかわりをしてくれたりして、とても嬉しかったですね。 食べ過ぎて動けなくて、食後にお風呂に入るのが大変、というお子さんもいたくらいです。
誕生日を迎えた当人が、お風呂から出てきて「誕生日のディナーを作ってくれた、 こんな美味しい料理を作ってくれてありがとうございました」としっかりお礼を伝えてくれました。 何もできることがないからと、お礼に肩をもんでくれて、本当にうれしかったですね。職員の方もびっくりしていました。
この食事をきっかけにして、自分の気持ちを話してくれるようになった子がいたことも本当にうれしかったです。

◆実習日誌について教えてください。

児童養護施設と保育所では、求められていることが違うと感じました。
児童養護施設で、指摘されたのは、例えば子どもたちに対して「指導」という言葉を使っていると、 それは上からの目線であると、子どもと同じ目線の言葉に、と訂正が入りました。
3枚の日誌をぎっしり埋められることも、埋められないこともありました。3歳~中1が暮らしている小舎での実習の際は、 毎日いろいろなことが起こるので、書くことに困ることはありませんでした。 思春期の子どもたちの施設で、まだコミュニケーションがまったくとれない時期には、書くことがありませんでしたね。
無理に必ず3枚埋めるということはしていなくて、ただ、考察はしっかり書くよう心がけていました。 毎日、4時間半近くかかっていて、内容についてはよくかけていると評価もしてもらいました。

◆実習を振り返って、特に印象に残ったことはなんですか。

実習の終わりに子どもたちが送別のパーティを開いてくれたことには、とても感動しました。 最終日は、ほとんど1日レポートを書いて過ごし、子どもたちと接する時間は少なかったのですが、 食事の時間だけ子どもたちと一緒に過ごすことができました。 その時間を使って、サプライズでパーティをしてくれ、また、去る時にはしっかりとあいさつをすることもできました。
児童養護施設での実習は、その後の人生を変えるような経験でしたね。

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