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実習について

【実習生は労働力!?施設側の受け入れホンネとは?】
神奈川県・児童養護施設 聖母愛児園の実習担当者にインタビュー!

山下さん

◆実習の受け入れ状況は?

保育士資格を目指している学生がメインで、2022年度は10校10名です。期間や日数は学校によって違いますね。
オリエンテーションは、1週間前までに行うこともあれば、実習初日にやることもあります。内容は、 施設の概要、職員構成、取り組み、沿革、注意事項などです。 注意事項というのは、安易にプライベートの話をしないことや、バウンダリー*について、また困った時は職員に相談・確認するというようなことですね。
あと実習生には、実習の目標・目的を聞いています。何を知りたいのか、何に関心があるのかを教えてもらえると、 それに応じて実習の中身を変えていけますし、関わり方を考えやすいです。具体的に目標・目的があるほど、実習も充実したものになると思います。

※バウンダリー:ここでは自分と他社とを区別する境界線のことを指す

◆実習前に実習生に準備してほしいことは何ですか?

何もかも分からなさすぎて不安という声を聞くので、具体的な児童養護施設の現状を知ってくれていたらいいと思っています。
ただ、これは養成校での学習内容にもかかわってくるかもしれません。学校によっては、先生自体がアップデートできておらず、 昔の情報や印象のままで、現状をわかっていないこともあるように思います。 そういった場合は、施設に気兼ねなく電話で聞いてもよいと思いますね。

◆実習日誌を書く上での注意点は?

学校によって書式は違いますが、基本的な構成は1日の流れと気づきですよね。 ある学校の書式で、毎日ひとつのエピソード書くものがあって、それは読んでいても興味深かったです。 あったことをとにかく書くではなくて、何かしらのエピソードをひとつ深めて、職員の動きや声掛け、子どもの様子、 そこに至る経緯などを具体的に書くと、より充実した記録になると感じました。

◆実習受け入れ側としての課題はありますか?

実習評価の基準がないことを課題と感じていて、2022年度実習受け入れを再開するにあたり、評価の標準化に取り組んできました。
実習評価は実習生にとって大きなもので、評価することには責任も伴いますが、個人で評価がバラバラになっていた面がありました。 例えば家事について「お米を研いでおいてね」と指示をして米研ぎが出来なかったとしても、それは児童養護施設の職員として大切なポイントではないですよね。
これは、実習生を労働力として見るかどうかにも関わっています。 実習生はあくまで、児童養護施設自体や職員の働き方、そこにいる子どもたちを知り、そして仕事を経験するために来ているわけですから、 そのことを職員側で共通認識して、おもてなしをするような姿勢で受け入れることが必要だと思っています。
実習生側で考えると、ついこの間まで高校生だった感覚だと思いますから、泊まりで実習をするだけでも大変だと思います。 今、知っている知らない、できるできない、ではなく学ぶ姿勢が大切ではないでしょうか。

◆実習生は、どんな心構えでいるとよいでしょうか?

なにより子どもと関わって、職員の動きや、職員と子どもの関わりややりとりを見て欲しいです。家事は完璧にしなくていいです。
そして思ったこと、気づいたことはどんどん伝えて欲しいですね。職員も閉じた世界にいるので気づけていないことは多いと思います。 実習生にはその視点を持っていると思うので、ぜひ教えて欲しいです。職員側も実習生の第三者的な目線を大事に真摯に受け止めたいと思っています。

◆実習後、どのように実習経験を活かして欲しいですか?

児童養護施設へ実習に来る学生さんは、養成校の中でも1/3位でしょうか。 残る2/3位の学生さんは、学校で児童養護施設について学んだとしても、実際に見たこと、足を踏み入れたことのないまま、 児童養護施設について誤った印象のまま卒業する方もいるかもしれません。
ですから、貴重な数少ない実習生の方には、実習を通して知った児童養護施設の実態、そこにいる子どもたちについて、身近な人に伝えていて欲しいです。

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