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「旅立ちをまえに」

コラム

児童養護施設

2020/03/20 01:12
「旅立ちをまえに」
 勤め始めてまもなくの頃です。3月に卒園を控えた高校3年生の女の子が、卒園までに担当職員みんなの似顔絵を描きたいと言い出し、その当時畳敷きだった職員の部屋の入り口に座って、宿直の日などに向かい合って描いてもらうということがありました。高校生になってからの関わりのため、日頃から「やり方が合わない。」と言われたり、文句のような違和感を口にすることもありましたが、それでも残り少ない学園での生活を惜しむように、他の2名の職員とも時間を作って描いていました。
 ある日のこと、言いたいことがあると改まったように声をかけてきたので、また何か言われるのかなと思っていると、「年下の子たちの為にも学園を辞めないでほしい。なぜなら、散々自分たちに“こうしろあぁしろ”と言っていたのに、辞めるってどういうこと。辞めて別の仕事をするなんて。」と職員全般に対する想いをこれだけは伝えたいと言って話してきました。その当時、結婚後も仕事を続ける例は少なく、職員の退職理由が結婚なら仕方ないとして、自分たちに色々価値観を押し付けてきたのに辞めて他の仕事に就くなんて納得できない。出来るだけ長く続けていってほしいと言うのです。人が替わる大変さや私たち大人の言動や振る舞いが子どもたち一人一人に大きな影響を与えていること、一人の人の子ども時代という貴重な時にたずさわっていることの責任の重さを深く感じ、心に残った言葉でした。
 あれから20年が過ぎ、随分働き方も変わってきて育児をしながら続けている方も多くなりました。どうしてもそれぞれのタイミングで出会いとわかれは起こるものですが、様々な世代や色々な働き方で、今いる子どもたちに出来るだけつながりのある関わりを目指してやっていきたいと思います。
 ベトレヘム学園は新園舎に引っ越して丸2年が経ちました。3月に6名の高校3年生が社会へと旅立っていきますが、これからも時々立ち寄ったり、
帰ってこられる「家」として一緒に見守っていただけるよう今後も宜しくお願い致します。
                                   養護主任 鈴木則子

ベトレヘム学園(東京都の児童養護施設)のおたより