小規模化の本来の目的
小舎制への移行は、単に施設の見た目を「家庭的」にすることだけが目的ではありません。その核心には、以下の2つの本質的な意義があります。
1. 安定した愛着関係の形成
こどもの心の成長に不可欠なのが、特定の大人との間に築かれる安定した愛着関係です。小舎制では、こどもと関わる職員が固定化・少数化されるため、こどもは特定の職員を「自分の担当の大人」として認識しやすくなります。
この継続的で予測可能な関わりの中で、こどもは安心感を育み、職員を心の「安全基地」とすることができます。これは、虐待などによって傷ついた愛着を修復し、人を信頼する力を取り戻す上で、極めて重要なプロセスです。
2. 一人ひとりへの個別的なケア
生活単位が小さいことで、職員は一人ひとりのこどもと深く向き合う時間を確保できます。これにより、それぞれが持つ発達段階、心理的な課題、得意なことや苦手なことをきめ細かく把握し、その子に本当に合った個別的なケアを提供することが可能になります。
「みんな一緒」の画一的な関わりではなく、その子のペースに合わせた学習支援や、心の状態に応じた声かけなど、オーダーメイドの支援が実現しやすくなります。
形態と現状
小舎制には、施設の敷地内に独立した一軒家のような建物(コテージ型)があるタイプや、大きな建物の中を住居単位で完全に区切るユニット制などがあります。
かつて主流だった20名以上の「大舎制」では、どうしても集団としての管理が優先され、上記のような個別的な関わりが困難でした。そのため、現在の日本では、こどもの最善の利益の観点から、この小舎制、あるいはさらに小規模なグループホームへの移行が、国の方針として強く推進されています。
(※なお、13名から19名の規模のものは「中舎制」と呼ばれます。)